トレイルという値から考えた・・

 自転車の操縦性、ハンドリングの目安としてトレイルという値があります。
サイクリング用の自転車を作る場合、たとえば700Cの車輪の場合、私はトレイルは55mmを基準として設計をしています。具体的にはキャスター角73度、オフセット45mmでトレイルは55mmになります。キャスター角72度、オフセット52mmでもトレイルは55mmになります。
 同じトレイルでも角度が違えばハンドルの切れ方は異なります。感覚的な表現でいえば73度より72度のほうがゆったりとした感じです。ここまでは作り手の話。乗り手の希望を数字で表現しなければならないからです。
 乗り手としては トレイルという値はあくまでも目安と捉えたほうがよいようです。なぜならばハンドルの切れ方はこのトレイルだけでなくてタイヤの質量や特性、前後車輪に加わる荷重のバランス、乗り手のフォーム、体重などによっても変わってくるからです。もしかしたら、サドルを5mm後へ動かしただけで乗りやすくなることだってありますから。あくまでも目安です。
 このようなことは他の部分にもいえます。ハンガー位置、フレームのしなやかさ(硬さ)、フレームの材質、タイヤのグリップ。他の人にいいものが自分に向いているとはかぎりません。自分の感性を信じましょう。
  自転車の各部分の寸法は乗り手の感性と作る側の都合とが折り合いをつけながら決まってきました。パイプの太さ、ねじの寸法。昔の自転車をみると、いろいろなものがあって当時の作り手の試行錯誤の跡がわかります。たくさんのトライアルがあって、たくさんのアイデアが消えて、いいものだけが残ってきたんですね。

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